能見篤史さん=滝沢美穂子撮影

 4月9日。プロ野球・阪神タイガースは公式X(旧ツイッター)に「観戦マナーに関するお願い」というタイトルの動画を投稿した。「全ての選手に 愛のある声援を」。動画内でこう呼びかけるのは、元投手の能見篤史さん(44)。自身、現役時代には侮辱的なヤジに悩まされた一人だ。

のうみ・あつし 兵庫県出石町(現豊岡市)出身。鳥取城北高を卒業後、大阪ガスに入社。2004年秋のドラフト自由枠で阪神タイガースに入団。12年に最多奪三振のタイトルを獲得した。21年にオリックスへ移籍。22年に現役を引退し、現在は野球評論家として活動する。

 

 引退してから2年になりますが、いまだにファンの方から言われた言葉は、ずっと心の中に残っています。

 ベンチに向かう時に「早く帰れ」とか、球場を出る時に「死ね」とか。「あなたの顔も見たくない」という手紙をもらったこともありました。

 甲子園のマウンドに立つと、ファンの声はよく聞こえてくるんです。ヤジがうまい人は、球場が静かになったタイミングで声を出してきます。

 誰か一人が発したら、言ってもいい雰囲気なんだと、どんどん声が集まる。相手は大人数ですけど、選手は1人です。

 プロ野球はそれだけ責任のある世界だと教わってきました。言われるくらいの成績だから仕方ないとも思っていました。

 けど、メンタルが落ちて現役を終えてしまった選手もいます。

写真・図版
阪神タイガースがXに投稿した「観戦マナーに関するお願い」

「明日も喋ろう 2024」

1987年5月3日、朝日新聞阪神支局に侵入した男が散弾銃を撃ち、記者2人が死傷しました。事件から37年。有形無形の暴力が個人の自由や尊厳を脅かす動きは後を絶ちません。屈することなく声を上げる人たちに話を聞きました。

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 現役時代に印象的だったポーカーフェース。何を言われても動じないイメージだが、実際は違うという。

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