核兵器研究所と兵器級核物質生産拠点を視察する金正恩総書記(中央)。朝鮮中央通信が2024年9月13日に報じた=朝鮮通信

北朝鮮インサイト⑮

 韓国の外交・安全保障政策の司令塔となる申源湜(シンウォンシク)・大統領府国家安保室長は9月下旬、11月の米大統領選の前後に北朝鮮が核実験を強行する可能性は「十分にある」と述べました。これに先立ち、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記は核兵器の原料を製造するウラン濃縮施設を視察しています。北朝鮮は核実験に踏み切るのか。長年にわたり、公安調査庁で北朝鮮を分析してきた坂井隆さんは「可能性を高める要因と低める要因がともに存在する」として予断を許さない状況だと指摘します。

【連載】北朝鮮インサイト

核・ミサイル開発に邁進し、日本にとってやっかいな隣国・北朝鮮。この国は実際どうなっているのか。40年以上にわたり、北朝鮮を分析してきた元公安調査庁職員による、プロフェッショナルの見方をお届けします。

 〈箱田〉ずばり、北朝鮮は2017年9月以来となる7回目の核実験をやるとみていますか。

 〈坂井〉北朝鮮は、軍事演習を繰り返す米韓の圧迫が加速度的に進んでいるとして、強く反発しています。また、これまで核実験のブレーキ役と目されてきた中国の存在もポイントです。北朝鮮にとって中国の位置づけが、ロシアとの関係強化を背景に相対的に低下しています。

 これらを考えると核実験の可能性は高まっていると言えるでしょう。

北朝鮮ウォッチャー 坂井隆さん

さかい・たかし 1951年生まれ。78年に公安調査庁に入庁し、ひたすら北朝鮮をウォッチし続けてきた。2012年に退官後も独自に分析を進め、その手腕は専門家らの間でも高い評価を得ている。共著に「独裁国家・北朝鮮の実像」(17年、朝日新聞出版)など。

 〈箱田〉韓国政府高官の発言には根拠がありそうですね。

 〈坂井〉他方、私は核実験をしない要因もあるとみています。

 〈箱田〉えっ?…

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