「バーでの出会いから始まった」

 「ばあちゃんの事件、詐欺グループの上の人間が捕まったらしいよ」

 妹(26)から記者(28)にそんなLINEが来たのは、4月のことだった。

 昨夏、北陸に住む祖母(81)が特殊詐欺の被害にあい、現金100万円をだまし取られた。

 現金の受け取り役「受け子」として逮捕されたのは、大学生だったトモヤ(仮名、21)。

 大学の級友だった山本(仮名、21)から「もうかる仕事がある」と誘われた。その山本も、友人から聞いた闇バイトの話を橋渡ししたとして逮捕された。

 ただ、2人の裁判では、祖母を苦しめた詐欺グループについて詳しく語られることはなかった。

 より上位の人物ならば、もっと詳しく知っているかも知れない――。

連載の第11回は、受け子の大学生を詐欺グループに紹介した人物について、裁判取材をもとに描きます。(事件の特性を踏まえ、この連載では、記者以外の登場人物を仮名表記しています)

  • 【受け子の視点】心臓ばくばく、受け取った紙袋 誕生日会の2日後、大学生は留置場に
  • 【被害者の視点】「孫助けたい」信じた電話 100万円渡した祖母と受け子がたどる道

 妹と家族から、さらに話を聞いた。

 新たに逮捕されたのは、三浦(仮名、21)という男。

 三浦からの謝罪文を送りたいと、弁護人が電話をかけてきた。実行役のトモヤを詐欺グループに紹介した人物と説明されたという。

 三浦は、祖母の事件のほかに関東地方の女性4人からキャッシュカードをだまし取り、ATMで多額の現金を引き出した事件でも逮捕されていた。

 すでに裁判は始まっていた。祖母の事件が追加で審理されることを知った記者は5月、関東の裁判所へ向かった。

「すでにお前に10万円かかっている」

 法廷に現れた三浦は、短めの…

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