妻から被害を受けたDVについて話す男性

 妻からの暴力が始まったのは、結婚式の翌日だった。

 40代の男性公務員はその日、妻のためにお弁当をつくる約束だった。だが慣れない炊飯器だったこともあり、タイマーボタンを押し忘れたまま朝を迎えてしまった。

 「ごめん、お米が炊けていない……」と言いかけたところで、いきなりビンタが飛んできた。

 一瞬、頭が真っ白になった。でもすぐに「仕事に間に合わなくなると焦ったのかな」と思い直した。10年ほど前のことだ。

 妻とは同僚の紹介でつきあい始めた。口下手な男性に対し、3歳上の妻ははっきり物を言うタイプ。自分とは違うところにひかれた。

 「結婚が前提のつきあいだよね」と何度も念を押され、交際1年もたたないうちに「高級レストランで店員から指輪と花束を渡される」というシチュエーションでのプロポーズを求められた。「そろそろ僕も結婚かな」と思い、妻の希望に応えた。

 新婚生活はその後も波乱続きだった。

 妻に言われて料理や掃除、洗濯、買い物など、ほぼすべての家事を男性が担当することになっていた。

 男性が食事の用意をしている間、妻は男性のスマホをチェックするのが日課だった。ある日、登録していた電話番号のうち、女友達のものだけが消されていることに気づいた。

 「嫉妬したのかな」。最初はそう思った。ところが次第に男女を問わず番号が消され、仕事の関係者の番号も消され、しまいには親戚や両親の番号まで消された。何度入れ直しても、消された。最後まで残ったのは、妻の親戚と義父母の番号だけだった。

 妻の行動はさらにエスカレートしていった。

11月19日は「国際男性デー」。DV被害者は女性に多く、支援も女性が中心になりがちですが、男性の被害者も少なくありません。当事者の声と共に、課題を伝えます。

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 気に入らないことがあると…

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