【連載】「インソウル」の呪縛 超一極集中の韓国 第1回

写真・図版
「インソウル」の呪縛 超一極集中の韓国 デザイン・佐藤茉優希

 韓国では、人口(約5170万人)の半分が首都圏に暮らしています。多くの若者がめざすソウルの大学を指す「インソウル(In Seoul)」という言葉が象徴するように、ソウルにいてこそ成功への道も開けるという「呪縛」が社会を覆います。「超一極集中」の韓国のリアルを詳しくお伝えします。「少子化編」、「移民編」、「高齢化編」に続き、韓国の人口問題を考えるシリーズの第4弾となります。

 1月初め、ソウル。社会を揺るがした「非常戒厳」をめぐり、国会で弾劾(だんがい)訴追された尹錫悦(ユンソンニョル)大統領の拘束・逮捕に向けた動きが連日、報じられていた。

 折からの寒波で、身を切る冷え込みが続く。私(稲田)は同僚(河野)とともに、ソウルの有名私大の一つである漢陽大で、3月から3年生になる車充秀(チャユンス)さん(23)と待ち合わせた。

写真・図版
地元の釜山からソウルにある漢陽大に進学した車充秀(チャユンス)さん=2025年1月8日、ソウル、河野光汰撮影

 車さんは韓国第2の都市、釜山で生まれ育ち、テスト期間以外でも毎日4~5時間の猛勉強を経て「インソウル(In Seoul)」と呼ばれるソウルの大学に進学した。

  • 【そもそも解説】韓国の人口の半分がソウル首都圏に なぜ一極集中?

 「なぜソウルの大学に?」。質問に車さんは「高校生の時、勉強を熱心に始めた時から自然と思っていました。ソウルに行かなければならない、と」。そしてこう語った。「実際に来てみて思いました。『絶対に来るべきだった』と」。自身の選択が正しかったことを確信したという。

 インソウルをめざしたのは、希望するスポーツ産業関連の専攻があったからだけではない。他大学の学生らと交流し、人脈を広げる機会があることや、暮らしを彩る様々な文化・商業施設などのインフラの充実、そして何よりも、就職の機会の豊富さを考えれば、大企業が集まるソウルと地方の格差は圧倒的だ。

 車さんが例外というわけではない。こんな話もしてくれた。

韓国では、ソウルの大学を卒業し、首都圏に本社を置く大企業に就職することが典型的な「成功」であるとの価値観が根付いているといいます。こうした「勝ち組」をめざすプレッシャーにさらされる若者の思いは。記事後半で伝えます。

 「韓国の中高生のほとんどが…

共有