
「今から始める投資のススメ」
2023年11月21日午後、LINEアプリの通知が鳴り、こんな名前のグループに勝手に追加された。
「投資」の名目で現金をだまし取る詐欺かもしれない――。こうピンときた。当時、記者は警視庁担当として、同僚と知能犯罪や悪徳商法などの取材を続けていた。
ただ、善意のグループである可能性も捨てきれない。
個人的には、NISA(少額投資非課税制度)の拡充などで、投資信託などの投資に関心がないわけでもなかった。
すぐにグループを抜けることもできたが、真偽や実態を探ろうと、あえて残ることにした。
「先生」「アシスタント」「カスタマーサポート」が次々と登場
「先生」「アシスタント」「カスタマーサポート担当」。次々と登場する、顔の見えない人物らとの4カ月にわたるやりとりが始まった。
「友達の招待で参加しました。家に猫を2匹飼っています。株式投資は初めてです」「同じく新人です」「20年ほどの株取引経験があります」
グループには次々と投稿があった。一方で、勝手に追加させられたのか、無言で退会するアカウントも相次ぐ。
参加から30分ほどして、「先生のアシスタント」を名乗るアカウントが投稿し始めた。このアシスタントによると、グループには「古いメンバー」も「新人」もいるという。
「先生」についてはこう紹介した。「講演会やセミナーの準備でお忙しいご様子です。後日、今までのように情報発信を再開するそうですので、それまでもう少しだけお待ち下さいね」
「預かり総資産900億円」 称賛するグループ参加者
複数のアカウントが先生を称賛した。「おかげで昨年かなり収益をあげました」「情報とアドバイスがとても分かりやすいので、毎回かなり助けられております」
アシスタントは、グループは少なくとも3年前から存在し、「先生の情報発信や投資に関するご指導を共有していく」のが目的と説明した。
先生のプロフィルとされる資料が何度かグループに投稿されていた。
日本の大学を卒業して米国で日本経済を研究し、シンガポールなどでファンド事業のマネジメントをしたり、複数の投資会社で投資コンサルをしたり。機関投資家からの預かり資産総額は900億円を超える。
こんな説明だった。ただ、具体的な組織名や在籍時期はほとんど書かれていなかった。
大手経済紙の記事をコピペ? ついに登場した「先生」
「おはようございます」。参加して2日目の午前10時過ぎ。いよいよ先生が登場した。
約1時間前に始まった日本の…