米イスラエル関係の深淵

 なぜ、バイデン米政権はイスラエルを擁護し続けるのか。

 イスラエルは、パレスチナ自治区ガザで子どもを含む民間人を多数殺傷し、隣国レバノンにも戦線を拡大している。停戦への努力に逆行するイスラエルの振る舞いは、明らかに米政府の意に反するものだ。

 それでもなぜ、イスラエルを止めるため圧力をかけないのか。誰しも抱く疑問だろう。

 国内外から向けられる「疑問」にバイデン政権がどう向き合ってきたのか、これからどう向き合うのかは、11月5日の大統領選の結果にも影響を与えうる。

 元米政府高官らに取材を重ねるうち、鉄壁とされてきた両国の「特別な関係」の底に、微妙な揺らぎも見えてきた。

連載「米イスラエル関係の深淵」(全3回)

「主は彼らに、まるで荒れ野を行くように 深い淵を進ませた」。ユダヤ人の嘆きや祈りを記した旧約聖書「詩編」の一節だ。国際的孤立の道を歩んでいるようにも見えるイスラエル。それでも擁護し続ける米国の論理と課題について、いずれもエルサレム支局長を経て現在、ワシントンで取材する記者2人が報告する。

 五つの米政権で、中東和平交渉を担ってきた元大統領特別補佐官のデニス・ロス氏(75)。この老練の元外交官に「問い」を投げかけるとまず返ってきたのが、「イスラエルに影響力を及ぼしたいのなら、彼らが直面している苦境に理解を示さなければいけない」という答えだった。

 多くのイスラエル人の心の中…

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