妻に先立たれ、一人暮らしの男性の食卓。静かな居間にテレビの音が流れる=2022年10月18日、愛知県、三宅梨紗子撮影
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

 6畳のたたみ部屋のテーブル。ご飯茶わん、焼き魚などが並べられ、コップになみなみと焼酎が注がれた。「いただきます」。小さな声が壁にはね返って響く。部屋の片隅にはおだやかな顔の女性の写真が飾られている。よく晴れた日の昼食。曇りガラス越しにわずかに日が差し込む。静かな部屋には、みそ汁をすする音がする。

 愛知県の男性(84)は20年前から一人暮らしだ。

 あの日は、いつもと変わらぬはずの朝だった。出がけに妻は「あいたたた、あいたた」と発したのを最後に大動脈解離で亡くなった。再婚同士で折り重ねてきた18年ほどの生活に突然ピリオドが打たれた。

 夫婦で暮らした住まいが広く感じ、単身用のアパートに引っ越した。70歳まで車の部品工場で働き退職。以前に社員寮の食堂で働いたこともあり、料理をすることはおっくうではない。

 それでも、加齢とともに買い物や自炊が負担になった。50メートル歩けば足がしびれる。自転車で近くのスーパーやドラッグストアに弁当や食材を買いに行く。

 部屋の片隅の古くなった炊飯器でご飯を炊かなくなってから久しい。3合を炊いて冷凍していたが、最近は、パックご飯をレンジで温めて食べる日々だ。

 最近、食卓に少し変化が生まれた。

つけっぱなしのテレビ 「しょぼんとするから」

 少し前に引っ越してきた近所…

共有