写真・図版
共和党のトランプ氏(左)と民主党のハリス氏=田辺拓也撮影

記者コラム 「多事奏論」 編集委員・岡崎明子

 今年は世界各地で重要な選挙が行われる「選挙イヤー」だという。米国では大統領選、日本でも自民党総裁選、総選挙と続いた。

 心理学を専門とするシカゴ大のアレクサンダー・トドロフ教授は、2人の政治家候補の顔写真を見せ、どちらが当選するかを予測させる研究を世界各地で行っている。米国でも日本でもブラジルでも「第一印象」によって約7割が当選者を言い当てることができ、子どもでも同じ結果が得られるという。

 著書「第一印象の科学」によると、判断を下すのに必要な時間は0・1秒。人は「より有能に見える」候補者を、本能的に選んでいるという。

 では、第一印象が常に正確かといえば、そんなことはないともトドロフ教授は指摘する。たとえば同じ人物でも、表情や写真の撮り方によって印象は大きく異なる。「犯罪者は凶悪な顔」「攻撃的な顔のスポーツ選手は反則しやすい」など、私たち自身が抱くバイアスによっても大きく左右される。

 第一印象で損をすることが多い私は、この指摘に激しくうなずいた。「第一印象差別」とも言える現象は、日常生活のあらゆるところに潜んでいる。

 その一つが、履歴書に添付する顔写真だろう。中京大講師の矢吹康夫さんは、企業の人事担当者818人に、1人につき8枚の架空の履歴書を見せ、書類選考を通る可能性を評価してもらう実験を行った。履歴書には特徴のない顔のほか、茶髪、顔に赤いあざがあるなど加工した写真を添付した。

 その結果、最も低い評価を受けたのは円形脱毛症の男性で、肥満の女性、茶髪の男性、顔にあざがある男性と続いた。茶髪は女性より男性の方が、肥満は男性より女性の方が低く評価されるというジェンダーバイアスも明らかになった。

 「思っていた以上に、露骨に…

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