東京電力福島第一原発の溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し作業は、出だしからトラブルが続いている。政府と東電は2051年までに廃炉を終える目標を掲げるが、早稲田大の松岡俊二教授(環境経済・政策学)はすべての燃料デブリを取り出すには「楽観的に見ても170年かかる」と指摘する。

福島第一原発の廃炉について研究する早稲田大・松岡俊二教授=東京都新宿区

 ――燃料デブリの取り出しは、8月に装置を押し込むパイプの並び順の誤りがわかり、その後も装置先端のカメラ映像が確認できないトラブルが起きました。

 単純なトラブルが重なったというより、ガバナンス(管理体制)に関わる根の深い問題だと感じます。廃炉作業に関わる各企業の技術力を高めるだけではだめで、それを横断的に総括する力が足りない。トラブルが片付いたらすぐに作業再開ではなく、問題を生じさせた原因をきちんと検討するべきです。

 ――今の体制はどんな問題がありますか。

 (政府出資の)原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が廃炉の「技術戦略プラン」を作っていることが大きな問題です。戦略は組織にとって最も大事なものだし、イチエフ(福島第一原発)の廃炉では技術戦略プランが最も大事。なぜなら、戦略が廃炉のあり方、東電の組織のあり方を決めるからです。自分の戦略を他人に決めてもらうなんて、あり得ないことですよ。

東電と国、NDFの「もたれ合い構造」

 ――振り返れば、2号機から燃料デブリの取り出しを始める、という計画を5年前に示したのもNDFでした。

 東電と国とNDFの3者が妙…

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