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2009年からソウル市内でベビーボックスを設置する李鍾洛牧師=2024年8月13日、韓国・ソウル、大貫聡子撮影
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 「保護出産制度が保護するものは何か。生命だ」

 韓国・ソウルにある主愛共同体教会。親が育てられない子を匿名で預かる「ベビーボックス」に取り組む李鍾洛(イジョンラク)牧師(70)は、そう力を込めた。

 韓国では2023年10月、「危機的妊娠及び保護出産の支援並びに児童保護に関する特別法」が成立し、記者が取材に訪れる1カ月前の7月に施行された。

 李牧師はこれまで国会議員らに働きかけ、制度の必要性を訴えてきた。

 保護出産は、困難を抱え支援を必要とする妊婦が本名を明かさずに医療機関で出産できる制度だ。出生届に母として名前が載ることはない。

 希望する女性は全国に16カ所ある相談機関に連絡。出産後も気持ちが変わらない場合は、親権が停止され、子は自治体の首長に引き渡される。実親の身元情報を含む子の出自に関する情報は国の「児童権利保障院」が管理し、子が希望した場合は開示される。実親の身元情報は実親の同意を得て開示される。

望まぬ妊娠に悩み、孤立出産に至る女性たちがいる。どう子と女性の命を守り、支援するのか。韓国と日本の取り組みを追った。

 現地報道によると、施行から…

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