北方向から見た知床岬=2022年4月29日、朝日新聞社ヘリから
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 知床半島での携帯電話エリア拡大を進める通信基盤強化連携推進会議が26日、北海道斜里町で開かれ、総務省が新設する基地局4局について説明した。一部は運用が始まっており、今年は知床岬と半島東側のニカリウスの先端部2地区で建設。来年から半島沿岸のほぼ全域で携帯電話が使えるようになるという。

 会議は昨年4月に続き2回目。総務省などの関係省庁、道、地元2町、地域関係者らが出席。一昨年、知床半島沖で起きた小型観光船の沈没事故で船長のKDDI(au)の携帯電話がつながらず、救助などの対応が遅れたことを踏まえ、総務省が不感地域の解消をめざして主導してきた。事業にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、楽天モバイルの4社が参加する。

 会議では4基地局の建設予定地や完成予想図、整備の進捗(しんちょく)状況などが説明された。このうち、知床岬では灯台の壁面をアンテナの設置場所として活用。それ以外の無線設備や電源となる太陽光パネルは新たな建設工事が必要で、各施設を結ぶ電線・光ケーブルも土中に敷設するため、地面を約2キロ、掘り起こすことになる。

 太陽光パネルの敷地面積は約7千平方メートルで、264枚(1社66枚)のパネルと蓄電池を配置し、高さ約3メートルのフェンスで囲う。近接する無線設備も同様だ。フェンスは景観に配慮した色を使う。

 だが、建設資材や設備の荷揚げ場となる岬西側の避難港「文吉湾」から灯台まで運ぶには運搬車などが必要だ。文吉湾から高台の台地までは急斜面、灯台に登る階段は狭くて急なため、この2区間はモノレールで運ぶ。モノレール設置には枝払いが必要だが、伐採や伐根は避けられるという。

 ササやぶが広がる台地部分は作業員の安全と効率性を考えて無限軌道付きの小型運搬車を使う。工期は5月から10月を見込む。

 知床岬は2005年に世界自然遺産に登録される前から人の立ち入りや工作物の建設が厳しく制限されてきた「秘境の地」。携帯電話は沈没事故後、国土交通省が旅客定員13人以上の観光船の法定無線設備から除外したこともあり、「観光船の観光客が通話や動画のライブ配信をできるようにするために岬に手を加えるのはおかしい」と疑問視する声もある。

 知床岬での大がかりな工事について、環境省の堀上勝・大臣官房審議官は「工事の手法などはしっかり生態系に配慮していただく」と語った。(奈良山雅俊)

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