AIまくらを開発した大分高専情報工学科4年生の(左から)上平真之介さん、平川晴己さん、佐藤光河さん、瀬山大貴さん=2024年4月24日午後4時27分、大分市牧、大村久撮影
  • 写真・図版

 大分工業高等専門学校の学生が、睡眠不足の解消を目指してAIまくらを開発した。東京都渋谷区で10、11日に開かれる「第5回全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2024」(高専DCON)の本選で上位入賞を狙う。

 コンテストは、全国の高専生がものづくりの技術とAI(人工知能)が自ら学習するディープラーニング(深層学習)の技術を組み合わせた作品を開発し、その作品を使った事業性について競う。今回は全国の31高専から72チームがエントリーし、2度の予備審査を勝ち抜いた11チームが本選で争う。

 大分高専のチーム「Sleep-New-World」が開発したまくらの名称は「FAIP(未来のAIまくら)」。読み込んだデータから、AIが自ら特徴を見つけ出して学習するようになるディープラーニング(DL)技術を活用したまくらだ。

 縦44センチ、横57センチ、高さ2センチの底板に圧力センサーを設置し、その上に高さ6~15センチの間で調整できる6分割のエアバッグがある。センサーが検知した数値をマイコンに取り込み、推測した頭部の状態に応じてエアバッグが頭や首にフィットするように空気を送り込んだり、抜いたりして、安眠に適切な高さになるよう自動的に調整できる。

 将来的には、睡眠時無呼吸症候群の人たちに向けて、いびきの音声データを加えたDLモデルの開発を目指すという。

 チームは情報工学科4年生の4人で構成。リーダーの佐藤光河さん、ビジネスモデルや情報収集など担当の瀬山大貴さん、制御回路担当の平川晴己さん、制御プログラム担当の上平真之介さんだ。佐藤さんはロボット研究部で高専ロボコンもやっていたが、3年生の時に勝つことができず自信を失った。「このままじゃまずい」と思い、DCONを目指したという。

 コンテストは技術力だけでなく、作品を販売するビジネスモデルも考えなければならない。そこで資料製作やビジネスプラン面で詳しいと感じていたクラスメートの瀬山さんに「DCONに興味ない?」と声をかけた。瀬山さんは、技術系コンテストは縁がないと思っていたが、誘いを受けて「何かできるのでは」と参加を決めたという。

 本選にはほかに、AIを活用した「デジタルえほん」や、インターネット上にあふれる情報の信頼度を評価するシステム、詐欺電話をリアルタイムで検知し詐欺の可能性を表示して音声などで知らせる装置などの作品が進んだ。

 10日の技術審査と翌11日のプレゼンで、成長が見込める企業に投資するベンチャーキャピタリストが各チームを企業に見立てて、作品の技術レベルと事業展開や収益の見通しなどを精査して企業評価額を算出し、順位が決まる。最優秀賞には100万円、2位は50万円、3位に30万円の起業資金が贈られる。(大村久)

共有