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望んだわけではない土地を相続で取得したものの、使う予定もない。そんな場合に土地を手放せる「相続土地国庫帰属制度」によって、個人の所有から離れて国のものとなった土地が、1月までに1324件にのぼることが、法務省のまとめでわかった。2023年4月の導入から1年9カ月ほど。申請の件数も月140件ほどで推移しており、法務省の担当者は「土地を手放したいニーズは継続的に存在している」とみている。
法務省によると、今年1月末時点で、全国の法務局に寄せられた相談は、制度の概要についての問い合わせなども含めて、のべ4万451件。申請まで至ったものは3343件で、このうち1324件では、すでに申請者の手を離れ、国が引き取った。内訳をみると、「宅地」518件、「農用地」405件、「森林」63件で、雑種地など「その他」も338件あった。
引き取った土地は、宅地などは財務省が、農用地は農林水産省が、森林は林野庁が、それぞれ管理する。申請者は、10年分の管理費に相当する「負担金」として、市街地以外の宅地で20万円などと定められた金額を国に納める。
この制度では、引き取ったあとに境界の紛争が生じたり、国民の税金を使って構造物の撤去や防災工事などが追加で必要となったりすることがないよう、▽建物がある▽境界が明らかでない▽土壌が汚染されているなど、却下あるいは不承認となる要件が示されている。申請3343件のうち、却下・不承認となった件数は、あわせて100件だった。
また、申請の「取り下げ」は511件あった。申請を受けた法務局は、申請者の同意があれば、地元自治体にも申請があったことを伝える。隣接地の所有者にも、境界の確認のために連絡が行く。こうした過程で、自治体や隣地所有者が引き取るケースも「取り下げ」に含まれており、法務省の担当者によると、「取り下げ」の半数程度は、こうした有効活用につながった事例という。自治体や隣地所有者が引き取った場合、国への負担金は不要だ。
国が引き取るかどうかは法務局職員による現地調査などもふまえ、法務相が審査して決定する。法務省によると、申請から決定までには平均で8カ月ほどかかっている。申請3343件には審査中の案件も多く、実際に国が引き取る件数はさらに多くなるとみられる。
過去に相続した土地も対象
従来、不要な土地を手放すに…