公立図書館の司書だった保富(ほとみ)貴子さん(61)は8年ほど前、友人に連れられてスナックを初めて訪れた。
互いに名前を知らないのに、常連同士が仲良さそうに話し込んでいるのに驚いた。
「誰もが気軽に来られる場所って大切だな」。思えば、勤務先の図書館もそうだった。
学校に通えない子ども。生活保護を受けるお年寄り。話を聞くうちに、身の上話になることもある。福祉につなぐ手伝いをしたこともあった。
いろんな事情を抱える人が来る場所なんだ、と感じていた。
行政の相談窓口に行くほどでなくても、家族や友人には話しづらい相談事は誰にだってある。
ただ、お酒が飲めなかったり、雰囲気が苦手だったりして、居酒屋やスナックには行きづらい人もいる。
特に女性はそうなのではないか。
定年まであと数年。「会社帰りに安心して立ち寄れて、気軽におしゃべりできる。働く人たちの居場所をつくってみたい」という思いが募った。
司書を辞め、経験のない飲食…