四国防災八十八話マップで紹介する百度石が伝える教訓。徳島県鳴門市在住のイラストレーター林美華さんが描いた

 徳島市沿岸部に近い沖洲蛭子(おきのすえびす)神社の境内に、「百度石」が2基立っている。

 一つは石の表面があちこちひび割れている。文字も刻まれているが読むのは難しい。もう一つは真新しい御影石で、側面にこのように記されている。

 「嘉永七寅年十一月五日、大地震が起こりました。(中略)舟に乗って流され、危ういところを助かる者もいれば、舟が転覆して命を失う者もありました。舟に乗ってはいけない。家がつぶれて、こたつやかまどから出火して、多くの家や蔵が焼けてしまいました。こういうときには心を鎮め、火の元に気をつけることが大切です。ももとせ(百年)しないうちに、このような地震・津波がやってくると言われています」(現代語訳、四国防災八十八話から引用)

 幕末の1854(嘉永7)年に起きた安政南海地震のできごとだ。傷みの激しい古い百度石は、この震災から7年後に氏子らが建立した。元々は新しい百度石に記された内容が彫られていた。

「四国防災八十八話マップ」で取り上げられている地震や津波に関する言い伝え・体験談から学ぶことのできる教訓を、マップのイラストも交えて、連載「つなぐ教訓」として紹介します。
今回は震災遺構が守られた「貴重なケース」です。

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熱意が周囲を動かした

 2021年5月、近所に住む井川博之さん(73)は参拝の際、ふと百度石をみると表面の一部がはがれ落ち、地面にちらばっていた。指で押すとボコボコ動いた。

 「これはいかん。貴重なもの…

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