練習する政成晴輝さん=2024年4月15日午前10時14分、兵庫県尼崎市、原晟也撮影
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 「ごめんね」

 中学3年生の冬。病院の待合室で、隣に座った母親から言われた。せわしなく診察券を片付けながら、涙を流していた。

 神戸市で17日から開催される「世界パラ陸上競技選手権大会」の男子やり投げ(視覚障害F12)に出場する政成晴輝さん(26)=兵庫県丹波篠山市出身=は、母親へのある思いを胸に競技場に立ち続けている。

 兄の影響で小学3年生のころに野球を始めた。中学時代は硬式チームで4番打者を任された。3年生の11月、目に異変が起きた。

 「練習試合で相手投手が投げたボールが消えた」。病院へ行くと、視神経症「レーベル病」と診断された。母親から受け継ぐとされるミトコンドリア遺伝子の変異をきっかけに急激に視力が低下する難病だった。

 「野球ができなくなる」と医…

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