
毎朝9時半、ラブラドルレトリバーのアイビーが東京都府中市の都立小児総合医療センターに出勤する。
アイビーは、医療スタッフの一員として働く「ファシリティドッグ」だ。
急性リンパ性白血病を発症した小竹愛依(めい)さん(11)が緊急入院してきたのは、2022年10月21日の夜だった。
4日後、病室にアイビーがやって来た。黒いつぶらな瞳。つややかな毛並み。
「かわいい‼」
その瞬間、アイビーは愛依さんにとって欠かせない存在になった。
週に数回、アイビーは会いに来てくれた。体調がいいときは、折り紙でつくったおもちゃで遊んだり、ぎゅーっとハグしたりした。
時にはいたずらもした。
おやつをハンカチの下に隠したり、耳にフーッと息をふきかけたり。でも、どんなにいたずらをしても、アイビーは「しょうがないなあ」という風に悠然としていた。
抗がん剤の副作用でおなかが痛くて寝込んでいる時は、何も言わないのに、おなかの上にちょこんと頭を乗せてくれた。点滴でぐったりしているときは、背中をくっつけて添い寝してくれた。
「アイビーがくると『幸せの時が来た!』という感じ。アイビーがいたから、入院生活も頑張れた」
約10カ月間にわたる入院生活を経て、23年8月に退院した。
父の透さん(49)は「アイビーが来てくれた日に面会すると、『今日、来てくれたんだよ』とめちゃくちゃうれしそうに報告してくれた。我々が帰るとき、寂しそうにすることもありましたが、『アイビーがいるから』と安心できたんです」と話す。
子どもの気持ち、瞬時に察知する能力
病院や特別支援学級など、特…