
A-storeis 「世界競争」の始まり(5)
遺伝子改変ブタの登場で、大きく実現に近づいたヒトへの異種移植。ブタの腎臓や心臓そのものを移植する以外に、さまざまな方法の「異種移植」でも研究が進んでいる。
1型糖尿病の患者や家族の団体「日本IDDMネットワーク」は4月、国内の四つの研究チームへの計6千万円の研究助成を発表した。
チームに共通するのは、糖尿病治療のため、ブタの細胞のかたまりをヒトに移植する「バイオ人工膵島(すいとう)移植」の実現をめざしていることだ。
オンラインで会見したIDDMネット理事長の井上龍夫は「私たちが、1型糖尿病『根治』の実現に最も近いものとして大きな期待をしている研究テーマ。ぜひ成果につなげていただきたい」と話した。
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膵島は、血糖値を下げる「インスリン」をつくる膵臓(すいぞう)の細胞の塊だ。これを、糖尿病などで血糖コントロールが難しくなった患者に移植するのが「膵島移植」だ。
脳死になった人から膵臓を提供してもらい、糖尿病の患者に移植する「膵島移植」は、すでに公的医療保険が使える医療として認められている。
一方で、膵臓から「膵島」を取り出す手技には熟練が必要なことなどから、実施できる医療機関は限られ、免疫抑制剤も一生飲み続ける必要がある。
これらの課題を解決する可能性が秘められているのが、ブタの膵島を使うバイオ人工膵島移植だ。
ブタから腎臓や心臓など臓器をまるごと移植する場合は、移植後に激しい拒絶反応が起きるため、遺伝子改変が必要になる。
一方、サイズが小さい膵島の場合は、直径1ミリにも満たない特殊なカプセルに入れて守ることで、遺伝子改変をしなくても拒絶反応を回避できる。
ニュージーランドやアルゼン…