左:芥川(間所)紗織「女(B)」(1955年)
右:芥川(間所)紗織「女(I)」(1955年)
いずれも東京国立近代美術館蔵、所蔵作品展「MOMATコレクション」で展示予定
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 染色で独自の絵画表現を切り開いた前衛画家、芥川(間所)紗織。生誕100年の今年、国内10カ所の美術館が連携して、各館が所蔵する作品を順次公開する。大規模な回顧展とは異なる一風変わった試みは、再評価に道を付けるか。

 感情や物語を鮮烈に表現する染色画から、油彩による抽象画へ。十数年の画業の前後半で、紗織の作風は大胆に転換した。

 画家としての経歴は異色といえる。東京音楽学校で声楽を専攻し、卒業翌年に作曲家の芥川也寸志と結婚。夫にとがめられるという理由で歌をやめ、代わって猪熊弦一郎の研究所で油絵を、染織家の野口道方のもとでろうけつ染めを学ぶようになる。

 川崎市岡本太郎美術館では、染色と油彩をともに手がけていた初期の油彩画「顔」が展示されている。人物の顔をびっしりと埋め尽くす細かな線は、このころの作品に多く見られる特徴だ。

感情あらわな女性像、自身を反映?

 1955年には岡本太郎によって選出された二科展で特待賞を受賞、一躍脚光を浴びる。一方、新聞では「芥川也寸志夫人でやさしいお母さん」と紹介されるなど、作品の評価とは別に著名人の妻という肩書にも世間の好奇の目は向けられた。

 この時に入選した染色画「女…

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