山極寿一さん

科学季評・山極寿一さん

 1月に私の所属する総合地球環境学研究所(地球研)の主催で国際シンポジウムが開かれた。テーマは「DANCE WITH ALL」(すべてのものとダンスを踊って)。副題として「On Animals and Anima」が付いている。ダンスとは身体表現であり、他者とリズムを同調させながら身体を融合させるコミュニケーションだ。他者には人間以外の生物、いや非生物も含まれるだろう。人類ははるか昔から他者と身体を共鳴させながら世界の動きを感じ取ってきた。その動きこそがアニマと呼ばれるものだ。しかし、言葉を始めとする人間独自のコミュニケーションを発達させることにより、その動きを察知し共鳴する能力を失いつつある。それを復興させ、壊れかかった地球と生物圏を救わねばならない時が来ている、というのがシンポジウムの狙いだった。

 シンポジウムは昨年4月に地球研に発足した上廣(うえひろ)環境日本学センターのキックオフも兼ねた。センターは人間中心主義を超え、人と自然の未来可能性を探求することを目的として、日本の従来の環境思想を軸に国際的な議論を展開するのが実践課題だ。初日は京都・清水寺で山伏たちのほら貝演奏で幕を開けた。「あわい」をテーマに、妖怪研究で名高い小松和彦氏と植物の生き方に着目した新しい哲学を提唱するエマヌエーレ・コッチャ氏が基調講演した。

 さて、「あわい」とは何だろう。「間」とか「淡い」と書くが、どちらともつかぬ、はっきりしない状態を指す。二分法の「白黒をはっきりさせる」、という言い方とは違い、あいまいさや「間」を許す考え方と言ってもいいだろう。実はこれが他者との会話、とくに人間以外の生物との会話には重要なのだ。

 私は長年、ニホンザルやゴリ…

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