福島県立福島東高校教諭の渡部純=2024年3月5日、福島市、笠井哲也撮影

 福島県立福島東高であった2021年度の「総合的な探究の時間」。この年のテーマは「3・11」だった。授業の冒頭、体育館に集まった2年生約240人を前に、公民科教諭の渡部純(50)は頭を下げた。

 「われわれ大人世代は、君たちの世代に原発事故によって被害をもたらしてしまいました。申し訳ない。ごめんなさい」

 生徒に、どこまで思いが伝わったかは分からない。それでも、と渡部は言う。「やっぱり謝るところから始めるしかないと思って。あんな出来事を起こしてしまった大人として、反省しなければいけないと思ったんです」

 渡部は「過去に目を閉ざす者は、現在にも盲目となる」という、ドイツの大統領だったワイツゼッカーの言葉で授業を締めくくった。

放射線への不安、沈黙した教員たち

 11年3月15日、東京電力福島第一原発の4号機が爆発した。約60キロ離れた福島市内では、空間の放射線量が通常レベルの500倍、毎時20マイクロシーベルトに達した。渡部が当時勤めていた県立福島商業高では、原発に近い浜通り地方の避難者を受け入れる避難所運営が始まった。

 だが、そんな「非日常」の中で、学校は「平時」のように動いていった。

 16日は入試の合格発表で…

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