警察官による暴行事件の付審判で検察官役を務めた三上孝孜弁護士=2024年9月17日午後、大阪市中央区、戸田和敬撮影

 取り調べで容疑者に暴言を吐いたとして、現職検事が法廷で裁かれる前代未聞の「付審判」で、検察官役を務める「指定弁護士」が決まった。

 かつて別の事件で指定弁護士を経験した三上孝孜(たかし)弁護士(79)=大阪弁護士会=に、その役割の難しさや今回の事件の意義を語ってもらった。

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現職検事の罪を問う異例の付審判決定

業務上横領の疑いで逮捕・起訴された不動産会社元社長・山岸忍さん(61)が無罪となった大阪地検特捜部の事件で、大阪高裁は8月、元社員に取り調べで暴言を吐いた田渕大輔検事(52)を特別公務員暴行陵虐罪で付審判を開くと決めました。「公務員の職権乱用」を検察が不起訴とした事件について、裁判官がじかに刑事裁判にかける珍しい手続きです。高裁は、検察の捜査・取り調べのあり方を「組織として真剣に検討するべきだ」と言及しました。

 ――今回の大阪高裁の付審判決定をどう評価しますか。

 捜査に警鐘を鳴らすものとして十分な、日本の刑事裁判史上に残る歴史的な決定だった。

 ただ付審判は無罪率が高い。公務員に対する職業裁判官としての信頼感がベースにあるように思われ、150%の立証が尽くされないと有罪にならない、という印象がある。

 一般論だが、問題になった行為が「暴行陵虐」に当たるか、つまり容疑者に精神的・肉体的苦痛を与えるものだったかを立証するのは難しいだろう。

 ――ポイントは。

 通常の裁判と比べて、証人や証拠が少ないのが付審判の特徴だ。だが、今回は取り調べの録音・録画という物証がある。録画記録が検察から全て引き継がれれば、指定弁護士は有利になるのではないか。

 問題はその評価だ。「検察なめんな」などの検事の暴言が、取り調べのどういう流れで出てきたのか。付審判決定には「机をたたいた」とあるが、どういう机で、どんな音がするのか。それがどの程度の脅迫行為になるのか。

 拘置所の取調室の雰囲気や、同席した検察事務官の証言、追及を受けた元社員がどのように受け取っていたかも重要になるだろう。

 ――指定弁護士の仕事の流れは。

 私が担当したのは、阪神タイ…

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