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能登町立美術館内には犬養毅が書いたとみられる書(中央、下)も展示されている=2024年9月5日、石川県能登町宇出津、小崎瑶太撮影

 青い海を見渡す城跡に、石川県の能登町立美術館(羽根万象美術館)=同町宇出津=は立つ。元日の能登半島地震は同町でも、9千を超える建物を傷つけたり、倒壊させたりした。そうした家屋から救出された文化財が展示されていると聞いて足を運ぶと、土地のもつ豊かな歴史が見えてきた。

 能登町役場から南東に1・5キロ。遠島山(とおしまやま)公園として整備された富山湾に突き出た一角に、めざす美術館はあった。木々の緑に囲まれ、三つの展示室を持つ。

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能登町立美術館=2024年9月11日、石川県能登町宇出津、小崎瑶太撮影

 9月に能登町担当となったばかりの私(25)に、学芸員で町教育委員会の寺口学さん(35)が、ここは室町時代に築かれたと伝わる棚木城の跡地だと教えてくれた。14代穴水城主・長(ちょう)光連(みつつら)の弟の多奈木左近が築いたといわれるが、確かなことはわからないという。

 そんな城跡に美術館が開館したのは1989年。当初は旧能都町(現能登町)出身で、美人画を得意とする日本画家・羽根万象さん(1919~2007)の作品を展示するため、その名だけを冠していた。だが、より幅広い作品を見てもらおうと、町立の名を併記するようになったという。地元の画家の個展も開催している。

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救出された文化財について説明する寺口学さん=2024年9月5日、石川県能登町宇出津、小崎瑶太撮影

 いま開かれているのは特別展示「救出された地域の歴史・文化資料」だ。元日の地震で壊れた建物内に残されたり、破損したりした工芸品や古文書を救出し、応急処置をして一時保管する「文化財レスキュー」によって守られた品々12点が並ぶ。

 高さ約60センチの阿弥陀如来立像は、津波で浸水した同町白丸地区の家屋から見つかった。倒れた仏壇の中で、光背や台座がバラバラになっていたという。江戸時代初~中期の作品とみられ、応急処置をして展示している。

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津波に飲まれた家屋から救出され、修復された阿弥陀如来立像=2024年9月5日、石川県能登町宇出津、小崎瑶太撮影

 毛筆の書2点は、五・一五事…

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