
2月1日、仮谷実さん(65)の銀行口座には、いつも通り1万円が振り込まれていた。
仮谷さんはそれを確認すると、取引画面を閉じた。毎月欠かすことなく続けられた示談金の支払いも、13年間続いたやり取りも、これで終わりという。
振り込んできた相手は、元オウム真理教幹部の平田信元受刑者(59)だ。
30年前の2月28日。公証役場事務長だった父の清志さん(当時68)は教団幹部らに拉致され、その後亡くなった。
実行役らが次々と逮捕されるなか、運転手役の平田元受刑者は17年近く逃亡を続け、2011年12月末に自ら出頭。逮捕監禁容疑で逮捕された。
オウム真理教が起こした事件で父を失った仮谷実さんは、事件に関与した教団元幹部とのやり取りを13年間続けました。そのやり取りも2月に終えたといいます。
突然届いた手紙、内容は
その平田元受刑者から実さんに手紙が届いたのは、逮捕から2カ月後の12年2月のことだ。
「私の非道な行いをおわび申し上げます」
謝罪の言葉が並んだ手紙は、その後も届いた。
刑事裁判に先立つ13年7月、平田元受刑者と実さんとの間で1千万円を支払うことなどを条件に示談が成立した。
実さんが条件にしたのは2点。父がどうやって亡くなったのかを明らかにするため、事件の真相究明に協力すること。出所後10年間、毎月5万円ずつ支払うこと――。
初公判で予想外の行動に
14年1月の初公判。平田元…