「社会に報復するためにきたのでは」

 「社会に報復しようとする若者か」

 昨年11月、湖南省常徳市の小学校前で、車が30人を次々にはねる事件が発生した。SNS上では、事件を目撃した人たちが興奮気味に語る動画が出回った。

【連載初回はこちら】中国当局が警戒する「八失人員」とは? 生きづらさ抱えた人びと

激しい受験競争や結婚、就職、そして失業…悩み多きそれぞれのライフステージを、中国の人びとは日本人にもなじみがある漢字を使って巧みに表現しています。そんな新語・流行語から、中国社会のいまを読み解きます。

 運転していた男は、拘束されてわずか1カ月あまりで執行猶予付きの死刑判決を言い渡された。男は裁判で、投資失敗や家族トラブルなど個人的な憂さを晴らすために犯行に及んだと認定された。

「報復社会」

 「報復社会」。社会から排斥され不利益を被ったと考える者が、社会を標的に無差別の暴力に訴える――。文字通り「社会に報復する」という言葉で事件をとらえた投稿が昨秋以降、SNSで絶えない。

 今月23日に被告に死刑判決が下った蘇州日本人学校の送迎バスが狙われた事件では「『報復社会』のために中日関係を破壊しようとする者は厳しく罰せられなければならない」という投稿がみられた。判決は「借金苦から生きているのが嫌になり、子どもを含む3人を殺傷した」と認定した。

中国・広東省東莞市の簡易宿泊所街にあるネットカフェ。ここで夜を明かす日雇い労働者も多い=2024年12月3日、小早川遥平撮影

 いったい誰が、報復に走るのか。香港メディアによると、35人が死亡した車の暴走事件があった広東省の当局は、所得・地位・人望が低く、人付き合い・社会との触れ合い・不満のはけ口が少ないといった「三低三少」の人物への監視を強めているとされる。

 実際はどうなのか。低賃金の出稼ぎ労働者が集まる広東省東莞市を訪ねた。

投稿されては消される俗語も

無差別事件やその実行犯を指すネットスラングも生まれました。その中には、日本で犯罪を起こすことにためらいのない人を指す俗語もあります。どんな言葉でしょう?

 東莞市は改革開放後、様々な…

共有
Exit mobile version