(23日、第106回全国高校野球選手権南北海道大会札幌地区Aブロック1回戦 札幌静修2―10札幌光星)
8点を追う七回表2死、ここで倒れると最後の打者になってしまう。
札幌静修の西藤宏斗副主将(3年)は「とにかく後ろにつなぎたい」と打席に立った。2球続けてファウルで粘ったが、空振り三振。
「小学1年生からずっと続けてきた野球が終わってしまう……」
涙がこみ上げ、唇をかんだ。
もともと、口数は少ない方だった。1年生の頃から試合に出場し、先輩たちがピンチの時こそ声を出し続けていた姿を間近で見ていた。
豊富な経験を買われて副主将に抜擢され、チームを引っ張ってきた。
だからこの試合、点差が開いても「まだやれる!」と、大声でチームを鼓舞した。
7点を先行されて迎えた五回表2死二、三塁、3度目の打席が巡ってきた。周囲から「スピード感のあるつなぎの1番打者」と一目置かれる存在だ。
直球を狙っていたが、甘く入ってきた変化球を捉えた。中前に運び、2人の走者が生還した。周囲の期待に応えた一打に、「みんなでつないでくれたチャンスで1本打つことができてよかった。チームメートには感謝したい」。
山口凱監督も「あの1本はつなぐ野球をしてきた3年間の彼の集大成。米谷春琥主将と一緒にチームを引っ張ってくれた」とねぎらった。(鈴木優香)