売り出しを予告するため、2018年にSNSに投稿された浴衣の写真

記者コラム 「多事奏論」 オピニオン編集部記者・田玉恵美

 久しぶりに昔の取材先に顔を出すと、しばらく会わないあいだに「えらいことがあった」という。

 大阪・船場で着物屋「ゴフクヤサン・ドットコム」を営む居内(いうち)久勝さん(56)は6年前、新しい浴衣を作って売り出そうとした。

 紺地と白地の2種類で、客から「こんな柄の着物がほしい」と要望があった文様を全体にあしらう。画像資料などを参考にしてデザインし、その写真をSNSに載せて販売を予告した。

 「かっこいい」「めっちゃかわいい」「すてき」。常連客からは上々の反応が寄せられた。

 だがしだいに異議が上がり始める。浴衣の柄が、アイヌ民族に受け継がれてきた文様だったからだ。

 アイヌを抑圧した和人の伝統…

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