アントニオ・デ・シモーネ教授。「アウグストゥスの別荘」と呼ばれる遺跡発掘現場で=2024年2月22日、ソンマベズビアーナ

 ナポリ近郊、ベズビオ火山の北側に位置するソンマベズビアーナ。この町では2002年から、東京大学などの調査団が遺跡の発掘調査を続けている。

ポンペイ遺跡も被災、1980年の教訓

 初代ローマ皇帝アウグストゥスの別荘があった可能性が指摘されている、この遺跡。西暦64年から繰り返し地震に襲われたあと、79年にベズビオ山の噴火で埋没。建物が再建されたものの、472年の噴火で再び埋まったとされる。

 日本同様、地震大国のイタリア。「家を再建する、仕事をもう一度始める――。遺跡からは自然災害の記録だけではなく、人々が災害にリアクションし続けてきた歴史の印が見える」。研究協力者であるスオール・オルソラ・ベニンカーザ大学のアントニオ・デ・シモーネ教授はそう話す。

 考古学者として、震災対応の最前線に立った経験がある。約3千人が死亡した1980年のイルピニア地震では、ナポリ国立考古学博物館やポンペイ遺跡も大きな被害を受けた。シモーネ教授は発災翌日にナポリへ向かい、博物館や市街地にある文化財の被害調査を始めた。一方、救助活動やインフラ再建を終えた軍隊と考古学者の合同チームでポンペイ遺跡の保全に入れたのは、その半年後。文化財の規模や立地、人員の数によって、初動の早さにばらつきが出た形だ。

 「モノより人命第一だから…

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