詩人の新井高子さんは、東日本大震災で被害を受けた岩手県大船渡市を訪ねては、地元の女性たちと交流を重ねてきた。最新詩集「おしらこさま綺聞(きぶん)」(幻戯書房)は、この地域の方言を思わせるような、濁りを含んだ独特の言葉が強い印象を残す。
群馬県生まれの新井さんの岩手との縁は、民俗学を学んでいた大学院生時代から。地域の人々の話の聞き取りのため、海沿いの町に滞在したことが始まりだった。
東日本大震災のあと、新井さんは二十数年ぶりに岩手を訪れ、仮設住宅の女性たちと石川啄木の短歌を地元の方言に訳す集いを2年間にわたって開いた。「そこで東北のおばあちゃんたちと知り合えたことが、今回の詩集の文体の力になっている」と新井さんは言う。
「わだァし、ほどんど喋(さ…