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1世紀を超える歴史を持つミュージカルの殿堂・帝国劇場(東京都千代田区)が、建て替えのため2月28日でいったん閉館する。25年前に同劇場でデビューし、数多くの名作、大作で主役を張ってきたミュージカル俳優の井上芳雄さんに、大舞台の思い出や自身の道のりについて聞いた。
- プリンス・井上芳雄の野望「新帝劇にはオリジナルミュージカルで…」
帝劇の喪失感、これから実感するのかな
――帝劇の閉館をどう受け止めていますか。
こういう取材とか受けて、寂しいな、と率直な思いがあって。もちろん大切な存在だと思ってたけど、なくなるとは考えない。劇場も場合によっては、終わることがあるんだな。あんまり考えないようにしてたんですけど、この時期になってくると、実感が湧いてきて、ほんと寂しいな、という感じですかね。
ただ、帝劇とは何だったのかを一度みんなで考える機会にはなってるでしょうし、ミュージカル自体もスポットが当たる。僕は帝劇最後の日に、劇場から生中継をやらせてもらうんです。自分が出ている番組のスタッフたちと「最後に番組できないですか」と話すなかで。いいように考えれば、帝劇が建て替えしなければ、実現しなかっただろうから。
帝劇サイズの作品はもちろん他の劇場でやるんですけど、帝劇でやるのとは同じではないですし、その喪失感はこれから実感するのかな。ミュージカルにとっては思っている以上に大きな意味を持ってしまうのかな、と何となく危惧しています。
――他の劇場と帝劇の違いは何でしょう。
あの規模(1897席)で常に何かしらやっているのは大きいですし、ここ10年ぐらいはミュージカルの劇場って認知もされているので、ミュージカル俳優はそこで大きな規模のものをやれる。
帝劇が好きで、帝劇だけ見に来てくださるお客様がいらっしゃる。劇場や日比谷の雰囲気込みで、観劇を楽しんでくださってた。そういう文化がいったん止まってしまうのは大きいな。一歩中に入ると日常を忘れる作用が、特に強かったと思うんですよね。
――ご自身の帝劇の初体験は覚えていますか。お客さんか、俳優か。
お客さんが先ですね。大学受験の前に東京に来て、そのときにやってるレミゼ(「レ・ミゼラブル」)を見たのが初めてじゃないかなあ。
ただそのときは劇団四季に入ろうと思ってたんで、あんまり縁があるとは思ってなかったんですよ。(育った)福岡には博多座もなかったし、東宝系を見る機会がなくて、四季に比べると芸能界寄りの華やかなとこだなあって。あと、レミゼに出てる男の人は岡幸二郎さんとかみんな大きいし、声もばんばん出る人じゃないと出られないんだなあ、自分とは距離が遠いなあと。
「ルドルフ」で学んだこと
――役者として「エリザベート」で初めて帝劇の舞台に立ったとき(2000年)は。
無我夢中ではあったんですけ…