昨年8月、JR宇都宮駅と栃木県芳賀町をつなぐ次世代型路面電車(LRT)が開業した。LRTは低床式の車両で乗り降りしやすく、騒音や振動も少ない新型の路面電車システム。一般道路上のレールを走る路面電車が国内で新規開業するのは75年ぶり。開業1年の利用者数は想定を上回り、全国の鉄道ファンや地方自治体関係者から注目を集めている。
日本交通計画協会の調べでは、路面電車の事業者数は23。線路や土地のインフラ管理と、列車の運行を別々の会社が担う「上下分離方式」が3カ所で採用されており、全国19カ所で路面電車は運行されている。
近年、路面電車の事業者数は右肩下がりで減り続けてきた。交通政策に詳しい国学院大学の高橋信行教授(行政法)は「人口100万人を超える大都市では、車社会化によって渋滞が激増したため、地下鉄やモノレールに置き換えられてきた」という。
だが、コロナ禍が終わり、事業者によっては利用者が徐々に戻りつつある。
広島市を走る広島電鉄は6路線19・0キロを有し、2023年度の利用客数は4700万人超で、22年度を300万人ほど上回った。鉄道と直通し、JR広島駅と広電宮島口駅間を結ぶ。25年度には、広島駅中央改札近くに乗り入れる予定だ。同社広報・ブランド戦略室は、栃木の開業について「路面電車・LRTの魅力が多くの方に伝わる機会になる」と期待する。
長崎市の長崎電気軌道は5路線11・5キロ。23年度の利用客数が1500万人弱で、22年度からは100万人以上増えた。事業継続のため車内の広告媒体からも収入を確保し、自社で車両整備を行うなど支出削減にも力を入れる。
富山地方鉄道は06年にLRTを開業させた路面電車の先進地だ。市北部のJR路線がLRTとして再生され、並行するバス路線を廃止するなど公共交通も再編した。20年には高架化した富山駅の南北を直通でつないだ。昨年度の利用客数は726万人余で、利用客は増加傾向にある。
栃木に続く開業はあるのか…