赤信号の交差点への進入を疑似体験する消防隊員=2025年1月23日午前10時27分、兵庫県姫路市西今宿3丁目、東孝司撮影

 兵庫県の姫路市消防局と県立大学は23日、消防隊員が消防車の「緊急走行」を疑似体験できるVR(仮想現実)運転シミュレーターを報道陣に公開した。隊員による事故防止を目的としている。現在は実証実験の段階で、次年度以降に完成させるという。

 いつ、どこで必要となるか分からない緊急走行。実際の運転練習ができないことが全国的な課題になっている。

 この装置の開発は2023年にスタートした。街並みの3D映像をバックに、「赤信号での交差点進入」といった運転を体験できる。

 市消防局管内では消防車・救急車を合わせた緊急走行中の事故が22年度5件、23年度2件、今年度4件と断続的に起きている。出動件数の増加や熟練隊員の退職といった課題を克服するため、装置が必要になるという。

 この日、体験した姫路西消防署の西田樹(たつき)・消防副士長(27)はふだん救助工作車の運転を担当していて、「サイレンや無線の音もリアル。何に気をつけて走ればいいか、よく分かる」と話した。

 大学としては「消防隊員と一般人」「ベテラン隊員と若手隊員」の判断や動作の違いをデータ化し、安全ノウハウの確立も目指すという。

 今後、今は東京都内となっている3D背景を姫路の街並みに変えるといった改修を図る。救急車の運転訓練も課題として残っている。県立大大学院工学研究科の山添大丈(ひろたけ)・准教授(46)は「完成した装置でどんどん練習してもらうことで、事故減少につながれば」と語った。

 市消防局によると、この装置の開発は全国に先駆けたもの。東京消防庁も同様の取り組みを進めているという。

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