記者コラム 「多事奏論」 編集委員・原真人
「産業のコメ」といえば昔なら鉄鋼、今は半導体だ。「コメ」という言葉には国民生活に欠かせない、国家の礎、といった意がこめられている。だが政府は本物のコメをそう扱ってはこなかった。
世界中の国々が国内の食糧生産の増強に必死になっているのをよそに、日本は累計10兆円規模の税金をつぎ込んで主食用米の生産力をわざわざ落としてきた。
食の多様化に伴って減るコメ需要に合わせ、供給量を絞って米価を維持する減反政策である。日本はそんな倒錯した農業政策を半世紀にわたって続けてきた。その結果、コメの生産量は減る一方で、食料自給率はいまや4割を切る。
6年前、第2次安倍政権が減反廃止を宣言した。だが実態は変わらなかった。コメの生産数量目標の指示をやめたものの、コメ農家が飼料米や麦の生産に切り替えれば手厚い補助金を出す新制度は、供給を減らして米価を維持する減反政策を延長したも同然だったからだ。
この夏、そんなコメ政策の矛…