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プラスチックごみが散乱するタイの海岸=磯辺篤彦・九州大教授提供

 2050年までに追加的な海洋プラスチックごみの汚染をゼロにすることをめざすと、35年までに世界平均で海や川への流出重量を19年比で32%削減する必要があると、九州大の磯辺篤彦教授(海洋物理学)らの研究グループがシミュレーション結果から削減目標として提案し、海洋汚染の専門誌に発表した。

 日本政府は19年に大阪で開かれたG20サミットで「50年までに追加的な海洋プラごみ汚染をゼロにする」という世界目標「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を主導し、合意した。世界の研究者らが、プラの使用制限や廃棄物管理対策をもとに削減予測のシナリオはこれまでも提案してきたが、この世界目標を実現するための具体的な数値目標は示されていなかった。

 磯辺さんらは、世界の流出量の約9割を占める114河川からのプラごみが、海流の影響で海岸に漂着したり再漂流したりするなどして行方がどうなるかをコンピューターで計算。海の表層に浮遊するプラごみと、海岸に漂着したプラごみに加え、紫外線などで劣化し砕けてできたマイクロプラスチック(大きさ5ミリ以下)のうち浮遊するものと、海岸漂着のものの計4種類について、重量を予測するモデルをつくった。それらがいずれも世界平均で19年を超えない状況を「追加的な汚染をゼロ」と定義した。

 解析の結果、「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現には、ほぼ中間にあたる35年までに海や川への世界の年間流出重量を19年比で32%削減する必要があると推定された。

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タイのごみ捨て場。プラごみなどがむき出しになっている=磯辺篤彦・九州大教授提供

 「32%削減」には、海洋プラごみの排出が多いアジアやアフリカ諸国で廃棄プラ削減が順調に進んだり、プラの使用制限やリサイクル率の向上などの対策を効果的に組み合わせたりすることで達成できるという。

 例えば、プラごみの流出が最…

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