鉄を摂取することを目的にした海外事業者のサプリメントには日本人の推奨量を大きく超える量が含まれている場合があり、過剰摂取につながる可能性があると、国民生活センターが25日、注意を呼びかけた。実際に鉄過剰症などの健康被害が発生したとの事例が2件、同センターに寄せられている。
同センターの「医師からの事故情報受付窓口」へ今年2月に伝えられた情報によると、保護者がインターネット通販で購入した海外事業者の鉄サプリを約3年間飲んだ10代の女性が、口内炎と歯茎の腫れを訴え、鉄過剰症と診断された。1錠あたり54ミリグラムの鉄を含むサプリを1日に1~2錠飲んでいて、推奨量を大きく超える鉄をとっていたとみられる。
また20代の女性が鉄サプリをインターネット通販で買い、約11カ月飲んだところ倦怠(けんたい)感を訴え、鉄過剰状態と肝機能障害を疑われたという事例も、同時期に医師から窓口へ寄せられた。
同センターは大手インターネットショッピングモールなどを通じて、海外事業者の鉄サプリ5点を購入。1日あたりの摂取目安量における鉄の含有量とパッケージの表示量を調べた。
その結果、5点とも日本人の推奨量を大きく超えていた。最も多いものでは含有量が76.6ミリグラム、表示量が65ミリグラム。最も少ないものでも、含有量が19ミリグラム、表示量が18ミリグラムだった。
日本人の食事摂取基準に基づく1日あたりの鉄の推奨量は、18~64歳の月経がある女性は10.0~10.5ミリグラム、月経がない女性は6.0ミリグラム。18~64歳の男性は7.0~7.5ミリグラムとされている。
調査した5点はいずれも米国企業製で、パッケージには米国の1日摂取量に占める割合が示されていた。だが米国の1日摂取量は18ミリグラムの設定で、日本人の値とは大きく異なる。同センターは割合の数値を目安に日本人が摂取すると、過剰摂取につながる恐れがあるとしている。
「気になる症状があり、鉄の不足が心配な場合は、サプリを使う前にまず医療機関を受診し、医師に相談を」と同センター。
女子栄養大学栄養学部の上西一弘教授は、鉄は食事から摂取することが基本、とした上で「鉄の吸収率は、栄養状態や月経、妊娠の有無などによって大きく変動するため、一般の方が今の自分に必要な鉄の量を正確に把握することは難しく、多量に鉄が含まれるサプリメントを長期間にわたって摂取することは、過剰摂取につながる可能性がある」とコメントしている。