梅毒に気づくきっかけとなった症状の例を挙げた展示(左手前)=2024年11月2日、大阪市北区堂山町、花房吾早子撮影

 性的な接触で感染の恐れがある「梅毒」の報告が近年、全国で急増している。大阪府内でも流行しており、大阪市北区堂山町のコミュニティーセンター「dista(ディスタ)」で、症状や治療法などを伝える「梅毒展」が開かれている。

 ディスタの壁に掲げられた、箱形で半立体の作品12点。梅毒の主な症状やその経過、感染が疑われる経路、検査や治療の方法などをポップなイラストや図で表現している。東京都に住む「ハコ物館(ぶつかん)作家」のコケ丸さん(46)が制作した。

 男性同性愛者の親友2人が2022年、梅毒に感染していたことがわかった。流行していると聞いていた梅毒が、コケ丸さんにとって急に身近になった。2人から体験を聞いたり、調べたりして学んだことを整理。23年から、夜間に人が多く集まる東京の新宿2丁目や歌舞伎町などで「極私的梅毒展」として伝えてきた。

 コケ丸さんは「梅毒を含めた性感染症について、語ることをタブー視する風潮が根強い。楽しく学び、正しく知ってほしい」と話す。

 厚生労働省によると、梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌によって引き起こされる。性交やキスといった接触で、性器や口などの粘膜や皮膚を通して感染するとされる。

 数週間から数カ月かけて進行。症状として、性器や口の中に小さなしこりやただれができたり、手のひらや足の裏などに発疹が広がったりする。痛みやかゆみを伴わないケースや無症状の場合もあり、感染に気づかない人もいるという。

 23年に報告された梅毒の患者数は全国で約1万5千人、府内では約2千人で、いずれも過去最多を更新した。20~50代の男性、20代の女性の感染が多い。妊娠中に感染し、死産や早産となったり、生まれた子に「先天梅毒」の症状が出たりする報告も増えている。

 府内には、曜日や時間帯によって無料・匿名で検査を受けられる保健所や、女性スタッフが女性向けの検査を行うクリニックなどがある。治療はかつてより簡単で安くなっていて、梅毒は完治できる病とされている。

 ただ、長年にわたり治療せず放置していると、心臓や脳、血管などに障害が残ることもある。大阪市立総合医療センター感染症内科の森田諒医師(33)は「思い当たることがあれば、すぐ検査機関や医療機関へ行ってほしい。早く気づき、早く治すことが大事」と話している。

 ディスタでの「梅毒展」は24日までの木~日曜、各日午後5~10時。問い合わせはディスタ(06・6361・9300)へ。(花房吾早子)

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