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漁師と交流できる町、推し漁師ができる町、毎日が少し豊かになる町――。若手漁師4人組と女子高校生らが三陸の海をバックに、笑顔で町の魅力をアピールする。そんな約30秒のPR動画が、東日本放送(仙台市)の「みやぎふるさとCM大賞」で、最高の大賞に選ばれた。
年明けに放送されたテレビ番組で、大賞が発表されると、スタジオのライトが注ぐ中、声を上げる女子高校生の横で、はっぴ姿の後藤伸弥(40)が顔を赤らめた。三陸海岸の南部、宮城県南三陸町の戸倉地区でカキなどを養殖する漁師だ。「仲間と企画する漁業体験や交流をもっと広めたい」と語った。
14年前のあの日、後藤はシーズン最後のワカメ漁を終え、自宅でくつろいでいた。激しい揺れの後、消防団員として水門を確認し、高台に避難した。10メートルを超える津波が集落に流れ込み、引き波が眼下の家々を沖に持っていった。湾を埋めていたカキなどの養殖棚は全壊。後藤は「もう漁は無理」と町を離れ、ハローワークに駆け込んで会社員になった。
びっしり並んだ養殖棚、3分の1に
だが、4年後、また漁をした…