石狩湾新港の沖にある国内最大級の洋上風力発電所。2024年1月から商業運転を始めた=2023年11月16日午後1時17分、本社機から、角野貴之撮影

 「ゼロカーボン北海道」を掲げる北海道で、大規模な洋上風力発電の導入が本格化している。導入の決め手となるのが、再エネ海域利用法に基づく「促進区域」の指定だ。一般海域を最長30年間利用できて、国の支援も望める。国は、原子力発電所のような地域の分断を招かぬよう、自治体や地元関係者でつくる法定協議会の同意を指定の要件とする。しかし、ここに来て、この合意形成手法の「盲点」も浮かび上がっている。

 7月31日、北海道最南端の町、松前町で3回目となる法定協議会が開かれた。町沿岸の約3710ヘクタールに洋上風力発電所を建設することについて合意した。会議では、若佐智弘・松前町長は「人口減は深刻。気候変動で主力のスルメイカの漁獲量減少に歯止めがかからない」など実情を説明。町を「風をいかしたリニューアブルタウン」とする将来像を打ち出し、発電所が漁業の活性化や雇用創出などにつながる期待感を表明した。松前さくら漁協の吉田直樹代表理事組合長も「漁業資源を守っていかねばならない。漁業者と事業者が互いに知恵を出し合えば、共存共栄できる」と合意の理由を説明した。

 意見のとりまとめではヤリイカの漁期や産卵期の2~5月は工事を休止することや、マグロの漁期にあたる7~1月は沖合での工事で振動や騒音の低減措置をとることが明記された。地域振興のための財政面でも、売電利益を地元に還元する基金の設立も盛り込まれた。

松前沖、道内初の「促進区域」へ

 松前沖は今秋にも、道内に五つある再エネ海域利用法に基づく「有望な区域」の先陣をきって「促進区域」に指定される見通しだ。

 北海道は全国よりも10年早いペースで人口減が進む。国が推進する洋上風力発電所の建設は、過疎化対策の側面もあり、地元では賛同意見が少なくない。道内では同じく「有望な区域」である檜山沖、岩宇・南後志地区沖でも協議会が設立されて議論が始まった。

 ただ、協議会による合意形成手法を懸念する関係者もいる。

 8月2日、札幌市内で開かれ…

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