出荷を控えた今年の夏イチゴの生育状況を見守る池田康成さん=2024年6月13日午前10時56分、福井市大瀬町、長屋護撮影
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 希少な夏の国産イチゴを沿線で育てたい――。第三セクター「ハピラインふくい」(福井市)の社員らの取り組みが2年目に入った。今年は新たに老舗フルーツ店が取り扱いを決め、22日からは一般向けに販売する予定で、新たな魅力づくりが広がりをみせている。

 北陸新幹線の福井開業に伴い、JR北陸線の並行区間の運行を引き継いだ同社。平均乗客数からは赤字が予想され、沿線人口の減少などを背景に今後も厳しい経営が見込まれる。経営計画には利用促進策の柱として「駅周辺のにぎわいづくり」などが盛り込まれた。

 具体的に取り組むよう、まず求められたのが、2019年に発足したハピラインの1期生たちだ。その一人、池田康成さん(28)が発案したのが、沿線での夏イチゴの栽培だった。

 寮で仲間と野菜づくりに取り組んでいたときに思いついた。夏場のイチゴは輸入が中心で、国内の栽培地は東北や北関東など一部地域に限られるという。学術論文を参考に、暑さに弱いイチゴを夏に栽培するには、冬に融雪で利用する地下水をくみ上げてハウス全体や土の中を冷やす手立てが有効だと見いだした。

 福井市のビジネスプランコンテストで昨年、グランプリを受賞。JAの支援や、中小企業の経営相談に応じる国の制度も活用して準備を進め、昨年6月から福井市内で栽培を始めた。

 初年度は目標の600キロには届かなかったものの、約400キロを収穫。福井市と鯖江市の三つの洋菓子店に出荷した。

 この間、県内外の約10カ所から視察もあり、2年目に弾みがついた。今年の生産目標は600キロ。JAが運営する福井県内最大の農畜産物の直売所「トレタス」(福井市)などで22日から初めて一般向けに販売する。福井駅前などに店舗を構える「フルーツのウメダ」(同)でも取り扱いが始まる。

 沿線自治体のなかには地元特産のフルーツとコラボしたイベントができないか、検討する動きもある。池田さんは「駅前のにぎわいづくりや地域活性化に貢献したい」と意気込んでいる。(長屋護)

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