川の「環境」が、ようやく「治水」「利水」と肩を並べるきっかけになるかもしれない。
国土交通省の検討会が5月にまとめた河川整備のあり方の提言は、生き物の生息環境をめぐる定量的な目標を川ごとの河川整備計画に盛り込むよう求めた。
例えば、湿地の面積、瀬や淵の数、河川敷が冠水する頻度などだ。生息や生育、繁殖の「場」の目標を具体的に数値で示し、生物種の目標は可能な場合に期待される目安を記す。
治水や利水は、流量や堤防整備などの定量的な目標があるのに、環境は「保全を図る」といった定性的な記述にとどまってきた。明確にして現場の取り組みを促す狙いで、国交省も反映する方向だ。
ベースになったのが、河川工学や生態学の専門家でつくる河川生態学術研究会が昨年11月にまとめた緊急提言だった。
「河川生態系の保全と再生はより一層困難になりつつある」
緊急提言は現状の厳しさをこう記した。生物多様性の損失傾向に加え、気候変動、国土強靱(きょうじん)化や災害復旧の工事が負の影響を及ぼす可能性を指摘。項目の1番目に定量的な目標の設定を掲げていた。
背景には、現場を知る専門家の危機感がある。
「状況は危機的」「環境が後…