やっぱりジュリー

 半世紀以上、時代を映しだしてきた歌手の沢田研二さんには、俳優の顔もあります。近年の代表作は、キネマ旬報主演男優賞と毎日映画コンクール男優主演賞を受けた映画「土を喰(く)らう十二カ月」(2022年公開)。脚本・監督の中江裕司さんが語ります。

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 「土を喰らう十二カ月」の主人公は、信州の山村で暮らす作家のツトムです。自分で耕した畑の作物や山菜などで精進料理を作り、ひとり、日々を送っています。時折、松たか子さん演じる年の離れた恋人で編集者の真知子が訪ねてくる。

 ツトムは魅力的だけれど、身勝手な所もある人物なので、本当の「いい男」が演じないと映画全体が嫌みになってしまいます。誰なら成立するだろうかと考えて、思い浮かんだのが沢田さんでした。

 沢田さんといえば、僕が10代の頃、クラスの女の子たちがキャーキャー騒いでいた、キラキラの大スター「ジュリー」。僕らの世代にとって「唯一無二のカリスマ」です。いまは70代になり、体形もふっくらしていますが、きっとあの頃とつながる特別な輝きがあるはずだと考えました。

 出演依頼をしたら、「オーデ…

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