元和2(1616)年創業のヒゲタ醬油(しょうゆ)の銚子工場(千葉県銚子市)で9日、国産原材料と伝統の製法で仕込んだ限定品の玄蕃蔵(げんばぐら)醬油の蔵出し式が行われた。「五節句」に合わせて製造過程の節目の儀式を行っており、蔵出し式もその一環だ。
同社の創業者で、3代目・田中玄蕃の名にちなみ、「江戸造り」と銘打つこの醬油は、材料はすべて国産にこだわる。富山県産の大豆「エンレイ」、北海道産の小麦「春よ恋」、塩は香川県産の「瀬讃の塩」を使い、昨年11月に仕込んで以来、約10カ月かけて醸造する「寒冷期仕込み」だ。
五節句に行事を重ねる
五節句に合わせて行事を重ねる。1月7日の人日(じんじつ)の節句に「初櫂(かい)入れ式」をし、3月3日の上巳(じょうし)の節句には発酵の具合を確認する「諸味改め式」、7月7日の七夕(しちせき)の節句には同社の秘伝の米こうじを加える「秘伝極めの式」などと、五節句の日に作業を進め、9月9日の重陽(ちょうよう)の節句の日に、「蔵出し式」を迎えた。浜田孝司社長が瓶詰め前に味見をして出来栄えを確認した。
工場の中には「高倍(たかべ)神社」がある。料理の神様とされる磐鹿六雁命(いわかむつかりのみこと)〈高倍神=たかべのかみ〉を祭る千葉県南房総市千倉町の高家(たかべ)神社から分祠(ぶんし)された。この神前に玄蕃蔵醬油が供えられた。
社長が太鼓判「今年もすばらしい出来栄え」
この醬油は創業375周年だった1991年から醸造が始まり、今回で32回目の出荷。浜田社長は「当社の原点ともいえる醬油。香り、味が豊穣(ほうじょう)で、今年もすばらしい出来栄えだ。先人への感謝とヒゲタ醬油の伝統をこれからも守り伝えたい」と話した。
玄蕃蔵醬油は毎年5月から予約を受け付け、今年の出荷分の約3万5千本はすでに埋まっているという。(根岸敦生)