アリアケギバチ=九州大学の鹿野雄一特任准教授提供

 江戸時代、隣り合う藩同士の水争いから始まった遺構が、今となっては希少な魚のすみかになっていた――。

 九州大学と世界自然保護基金(WWF)ジャパンの研究で、福岡県に残る「廻水路(かいすいろ)」が、この地域の固有種でナマズの仲間「アリアケギバチ」の重要な生息場所になっていることが明らかになった。

 廻水路は、福岡県南部を流れる矢部川流域に残る水路群。江戸時代、矢部川を境とする久留米藩と柳川藩が、稲作のための水を自領に引き込むため競うように造ったと伝わる。矢部川に設けた堰(せき)の間をつなぐように水路を造り、下流の相手側の堰を迂回(うかい)して自分の藩の堰に水が落ちるよう設計されている。

 チームは、四つの廻水路と、矢部川に注ぐ二つの支流に調査地点を設け、アリアケギバチの生息状況を調べた。採集された70個体のうち、68個体が廻水路で捕まり、生息に関わる環境要因を解析したところ「廻水路であること」「水際に植生がある割合」が分布確率を高めていることがわかった。

 アリアケギバチは九州西部の…

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