東京電力福島第一原発事故から13年が経ったいまも、被災者の避難生活や苦痛は続く。そんな現場を裁判官たちが訪れた。被災者が国と東電に損害賠償を求めている訴訟の一つで5月31日、裁判官が原告らの自宅などを訪れて被害に耳を傾ける「現地進行協議」があった。どんなやり取りが交わされたのか――。取材で判明した非公開の協議内容を報告する。
午前11時ごろ、福島地裁の小川理佳裁判長らが同原発そば、除染土が積み上がる中間貯蔵施設の敷地に到着した。裁判官らは、2千人弱の被災者らが参加する「生業(なりわい)訴訟第2陣」(2016年末~)を審理している。
福島県内では放射性物質を表土ごとはぎ取るなどする除染が続く。ここは、作業で生じた除染土を運び込み、保管しておく施設だ。用地に住んでいた人たちは土地を手放したり、立ち退いたりすることを余儀なくされている。
大熊町の原告男性もその一人。自宅は壊され、遠隔地に住む。近隣の家族や友人は離散してしまった。
特に憤るのが、自宅近くの墓…