福島県にある水素製造施設「FH2R」。タンクに製造した水素をためている=2023年11月、福島県浪江町、市野塊撮影

 脱炭素社会に貢献するエネルギーとして注目される水素だが、その利用にリスクはないのだろうか。国外では水素による死亡事故も起きている。そもそも、水素は温暖化対策にどこまで寄与できるのか。

 水素を扱う上で注意しなければいけないのは、水素が爆発や火災の危険のある可燃性ガスということだ。水素の燃焼範囲は、空気中での濃度が4~75%と、プロパンなどほかの可燃性ガスに比べて広い。

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海外では爆発事故も

 水素社会への取り組みは国内外で加速している。だが、海外では水素による爆発事故も起きている。

 2019年5月に韓国の工場内にある水素貯蔵タンクが爆発した事故では、8人もの死傷者が出た。タンクだけでなく周辺施設も大きく損壊する規模の爆発で、静電気や火花によって着火し、爆発につながったとされている。

 その翌月には、ノルウェーの首都オスロ近郊の水素ステーションでも爆発事故が起きている。配管のバルブが不良だったために水素が漏れ出し、着火したことが原因だったという。

 こうした危険性から、一般的に水素を扱う施設などでは、水素を漏らさない、漏洩(ろうえい)はすばやく検知して止める、漏洩した水素を滞留させない、といった点で対策が講じられている。

 ただ、水素製造の現場などでは漏洩をゼロにするのが難しいこともある。水素製造に携わるある関係者は、製造過程で多少の漏れはあるとしつつも、水素は地球上の分子で最も軽い気体であり「大気中にでてもすぐに分散するので問題ないだろう」と話す。

 一方で、自然界では分子としてほとんど存在しない水素を、大気に放出することにリスクがあるかどうかを考えておく必要はありそうだ。

 22年、米プリンストン大学などの研究チームが、国際誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」にこんな研究をまとめている。大気中に排出される水素が、ある一定の量を超えると、温暖化を拡大させるリスクが高まるという。

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