「水俣病を伝える」と題した企画展が、国立民族学博物館(大阪府吹田市)で開かれている。焦点を当てたのは被害そのものではなく、水俣病の歴史や患者の苦しみを「伝える人」。折しも水俣病の風化を感じさせる問題が起きたばかりで、伝承の意味を改めて考える場になっている。
同館の平井京之介教授(社会人類学)が企画した。約20年前、水俣病の運動を調べようと熊本県水俣市を訪れると、伝える活動に情熱を傾ける人たちに心を奪われ、研究テーマに。今回、長年の調査を追体験できる展示にまとめた。
印象的なのが、平井教授が「水俣病を教えてもらった」という5人のインタビュー動画。そのうち4人は、水俣市とは関係のない「よそ者」だ。 実相を伝えるガイドツアーを長年続けてきた吉永利夫さん(73)は静岡市出身。旅の途中で、水俣病の原因となった有機水銀を含む廃水を垂れ流した工場前に座り込む患者らの姿を見かけ、現地に居着いた。「普段は気のいいおじさん、おばさんが、追い詰められて本気になると、こんなことまでするのかと感じた。エネルギーを持った人たちのことを伝えたい」
芥川仁さん(76)は宮崎市…