2030 SDGsで変える
SDGs(持続可能な開発目標)の取り組みを前に進めるためには、土台にある人権の視点が欠かせません。気候危機の問題では、安全に暮らす権利が脅かされている人権問題として捉える動きが広がっています。政府や企業に温暖化対策の強化を求める「気候訴訟」にも発展しています。(編集委員・北郷美由紀)
「明日を生きる」全国の16人が10社を相手に
危険な気候変動によって生命や身体、自己決定権などの権利が侵害されている――。「明日を生きるための若者気候訴訟」と名付けられた裁判の第1回口頭弁論が24日、名古屋地方裁判所で開かれた。
原告は全国の10~20代の若者16人。火力発電を手がける10社を相手取り8月に提訴し、国際目標に合わせて二酸化炭素(CO2)の排出を大幅に減らすよう求めている。
意見陳述に立った名古屋市の宮澤カトリンさん(29)は、「家族を作ることに不安を感じている。子どもたちは無事に過ごせるでしょうか。未来の破壊は許されない」。
電力部門はCO2排出量の4割を占め、化石燃料による火力発電は特に排出量が多い。原告らはJERAやJパワー(電源開発)、東北電力など事業を展開する10社に、産業革命前からの気温上昇を1.5度以下に抑える国際目標のもと削減計画を立てて実施することを求めている。
争点のひとつは1.5度という国際目標の重みと、企業には人権を尊重する責任があるとする「ビジネスと人権」といった国際規範の扱いだ。
地球沸騰の時代 何もしなかったと言われぬように
原告側はこれらは国際的公序…