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バイデン政権の戦略は、政策を覆すことが難しくなるように、法的な障壁やその他の仕組みを作るというものだった。しかし、トランプ大統領はその多くをすでに切り崩した=2025年2月、ニューヨーク・タイムズ

‘Full on Fight Club’: How Trump Is Crushing U.S. Climate Policy

 トランプ大統領は、就任からわずか数週間で、米国のみならず地球全体に長期的な影響を及ぼしかねない一連の施策を推し進め、米国の環境政策を根本から覆すとともに、米政府の気候変動への対応力を著しく弱体化させた。

 トランプ氏は、大統領権限の限界を押し広げる行動を次々と起こし、連邦政府の気候変動対策を骨抜きにし、公害規制を後退させる一方で、化石燃料産業[the fossil fuel industry]を強く後押ししている。

 世界は今、記録的な高温に見舞われており、科学者たちは化石燃料の燃焼が主因だと指摘している。その中で、トランプ氏は地球温暖化抑制の取り組みを放棄している。温暖化の影響は世界の各地で、これまで以上に多くの死者を出すハリケーンや洪水、山火事、干ばつとなって表れ、生物の種の絶滅も起きている。

 非常に短期間で米国の気候政策を全面的に見直すため、トランプ政権は連邦助成金を打ち切るとともに、大規模な人員削減を実施し、長年続いてきた環境規制を弱体化させている。

 新たに就任する大統領は皆、独自の政策課題を抱えている。とはいえ、トランプ氏が気候政策を根こそぎにするスピードと規模ときたら、前例のないものだ。環境関連の訴訟を専門とする米非営利法律事務所「アースジャスティス[Earthjustice]」代表を務めるアビゲイル・ディレン氏は、「これは、テニスの試合のように整然と行われる、通常の政権交代とは違う」と指摘する。「まるで『ファイト・クラブ』を極端にしたようなものだ」(訳注:「ファイト・クラブ」は、不満を抱える男たちが格闘クラブを結成し、暴力的な世界にのめり込んでいく様子を描いた1999年の米映画)。

  • 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」

テスラを経営するイーロン・マスク氏は、政府支出削減の取り組みで中心的な役割を担っています。一方、トランプ氏が標的にしてきた電気自動車は、バイデン政権下で得た連邦政府の支援の大部分を失いました。テスラの販売が打撃を受ける可能性もある、とNYTは報じています。

 トランプ政権のこうした動き…

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