大正大学の江藤俊昭教授=2024年5月15日、東京都豊島区、平川仁撮影

 日本の民主主義が死に至る。ゆっくりと、気づかないうちに――。今年4月、そんな危機を訴える、町村議員のなり手不足問題に関する報告書を全国町村議会議長会が公表した。原因はどこにあり、どんな対策が考えられるのか。報告書をとりまとめた検討会の委員長を務めた大正大学の江藤俊昭教授に聞いた。

 えとう・としあき 1956年東京生まれ。大正大学教授(政治学)。90年代に地方議会研究を本格化し、各地の議会改革に携わってきた。著書に「自治を担うフォーラムとしての議会」など。

 江藤氏ら報告書をまとめた有識者が現地調査した町村議会のうち、なり手不足が最も深刻だったのは、オホーツク海を望む人口3500人程度の北海道興部町(おこっぺちょう)だ。

 2019年と23年の町議選、21年の町議補選と3回連続で定数割れ。直近の町議選で2回連続定数割れだったのは全国で同町だけ。だが、江藤氏は「無投票や定数割れの議会は全国で増え続けている。他の議会もひとごとではない」と警鐘を鳴らす。

無投票の町村議会27・4%、あわや無投票は32・3%

 報告書によると、19~23年にあった926の町村議選のうち254議会(27・4%)が無投票だった。15~19年の204議会(21・9%)から50議会が新たに無投票となった。19~23年の選挙で無投票は回避できたものの、立候補者の数が「定数+1」だったのは299議会(32・3%)。この傾向が続けば、無投票・定数割れは今後さらに増えるとみられる。

 ただ、多くの住民は自分のまちの議員が何をしているのか知らず、議会が生活の役に立っている実感もない。議会のなり手不足が進んだとして、どんな不都合があるのか。

住民、専門家、行政を巻き込み始めた議会、政策に多様性

 「単に選挙がなくなるだけで…

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